大阪高等裁判所 昭和25年(う)724号 判決 1950年7月28日
被告人
梁昌奎
外四名
主文
原判決中被告人梁昌奎、同韓章薫、同籠本安清、同姜燦仲、同梁南廈に関する部分を破棄する。
本件を大阪地方裁判所に差し戻す。
理由
(イ) 職権を以て原審の訴訟手続が適法に行われたかどうかを調査するに原審第一回公判調書(記録第四九丁以下)中記録第五四丁と第五六丁との間の第五五丁に相当すべき一葉には丁数番号の押印なく、且つ検察官から取調を請求した書類として記載している証拠番号が第五四丁末尾において(六一)で終つているにかかわらず、右第五五丁に相当すべき一葉においては(六一)から始まり(七八)に終つているとともに第五六丁においては(九一)から始まつているのであつて、証拠番号の連続を欠いているのみならず、同丁においては(八六)から(九〇)までの証拠書類の記載を抹消して認印しながらその抹消字数の記載がなされていない。なお第五五丁に相当すべき一葉と第五四丁及び第五六丁との各契印を検するにその印影は前葉と後葉と濃淡の度を異にするものゝ如く又同第三回公判調書(記録第六六九丁以下)中記録第六六九丁と第六七一丁との間の第六七〇丁に相当すべき一葉には丁数番号の押印がないのみならず、その最後の部分の欄外記入に認印が押されていないとともに同紙葉にはその前後の各丁との間に契印を欠いているのである。従つて前記丁数番号の押印のない二葉の書面記載はその正確性が疑われるばかりでなくこれと前後を為す右各公判調書の部分が果していずれも正当に連続しているものであるかどうかも判明し難く、結局原審第一回及び第三回の各公判の整理が適法に行なわれたものであることを知る由なく、該公判調書はいずれも無効のものと言わなければならない。
(ロ) 更に同第四回公判調書(記録第七〇六丁以下)の記載によれば同公判は昭和二四年九月二九日開廷せられ裁判官は次回公判期日を同年一〇月一一日午前一〇時と指定して閉廷したことが認められるに拘らず、同第五回公判調書(記録第一二一一丁以下)の記載によると同公判は同年九月二〇日に開廷せられその調書が同月二五日に作成せられたことになつている。尤も前記第四回公判調書の記載並びに同公判において証拠調の決定をした証人原小夜子、同馬殿義治、同藤原茂及び同金城翰錫に対する各召喚状の郵便送達報告書の記載に徴して、右第五回公判調書の日時の記載が誤記であることは推測し得られないわけでないが、公判開廷の年月日は公判調書の必要的記載事項であるとともに、公判期日における訴訟手続で公判調書に記載せられたものはその公判調書以外の証拠によつてこれを証明することができないのであるから、前記第五回公判調書自体により、前回指定された昭和二四年一〇月一一日に開廷せられたことの認め得られない限り、原審第五回公判の審理が行なわれた日時は結局不明に帰し、同公判調書によつては本件の審理手続が適法に行なわれたものであることを知るに由なく同公判調書も亦無効であると言わねばならぬ。
そして右第一回、第三回及び第五回の各公判においてはいずれも多数の書証又は人証の証拠調或は被告人等に対する質問がなされているのであつて、右訴訟手続に関する法令違反は判決に影響を及ぼすものと認められるから原判決は破棄を免れない。